いってらっしゃい おかえり

2018年9月19日、何不自由なくひとり暮らしをしていた母が、突然脳梗塞で倒れました。この日は亡き父の誕生日でした。私の出産以来入院をするような大病をしたこともないという母でしたので、母にとっても家族にとっても、大きな驚きしかありませんでした。

命の危険が続く中、懸命に生きようとしている母のための1曲を作って欲しいと鎌田Pにお願いしました。

いつもは先に曲をいただいて詞をつくるという順番で作品になっていましたが、このときは「まず今の気持ちを書いてみて。歌詞になってなくてもいいから。」と言っていただいたので、つらつらと思いつくままに、自分の気持ちを書いていきました。

それはとても歌詞と呼べるものではなく、こんな愚痴みたいな日記みたいなものを人様にお見せしてよいものなのかという代物。それでも、私の気持ちを汲んでいただいて、すぐに曲が届きました。

その曲に改めて詞をつけたのが「いってらっしゃい おかえり」です。

どちらかと言うと、頼りなく放っておけないタイプの母でしたが、病気をしたことで母はこんなにも強い人だったのかと、私が知らなかった母の一面を目の当たりにすることになりました。

母は右半身の自由と言葉を失いましたが、つらいリハビリに嫌だと言うこともなく、涙を流すこともありませんでした。母が泣くのは、自分を心配してお見舞いに訪れてくれる人たちに会うときだけ。

そんな母の姿を見ている私の方がいつも泣かされます。

母が倒れてから約8ヵ月後、2019年5月19日のCDリリース記念ライブの会場には、母の姿がありました。「もう一度必ずライブに行く!」と決めた母は、見事にその目標をクリアしたのです。

その日初めてライブで歌った「いってらっしゃい おかえり」は、特別なものになりました。目の前で聴いてくださっている人達の涙がさざ波のように広がっていったことも忘れられない経験です。

母はこの歌をとても気に入っています。


コヨナク愛ス ♪ 岩井洋美

0コメント

  • 1000 / 1000